「業務の手順が担当者しかわからず、業務が属人化してしまっている…」
「新人や異動者への業務説明に、毎回多くの時間がかかってしまう…」
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
そのお悩み、業務フロー図を作成することで解決できるかもしれません。
実は、普段お使いのGoogleスプレッドシートで、誰でも簡単に業務フロー図を作成できるのです。
この記事では、Googleスプレッドシートの基本的な機能を使った業務フロー図の作成手順を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
この記事を読めば、特別なツールを使わずに業務の流れを可視化し、チーム全体の生産性向上につなげる第一歩を踏めます。
そもそも業務フロー図とは?作成するメリット
業務フロー図とは、その名の通り「業務の流れ(フロー)を図(チャート)で可視化したもの」です。
誰が、いつ、何をするのか、そして業務がどのように分岐し、どこへ進むのかが一目でわかるように示されています。
業務フロー図を作成することには、主に以下の4つのメリットがあります。
- 業務の全体像を把握できる
個々のタスクだけでなく、業務の開始から終了までの一連の流れを俯瞰できるため、関係者全員が業務の全体像を共通認識として持つことができます。 - 問題点や改善点を発見しやすくなる
業務の流れを可視化することで、「この工程は重複している」「ここの承認プロセスがボトルネックになっている」といった問題点や非効率な部分を発見しやすくなり、業務改善の具体的な検討につながります。 - 業務の標準化・属人化の解消
作業手順が明確になることで、担当者による業務のバラつきを防ぎ、品質を標準化できます。また、特定の担当者しか業務内容を知らない「属人化」の状態を解消し、誰でも対応できる体制を構築できます。 - 情報共有がスムーズになる(マニュアル・研修資料として活用)
新入社員や部署の異動者に対する研修資料として活用したり、業務マニュアルの補助資料としたりすることで、口頭での説明よりも迅速かつ正確に業務内容を伝えることができます。
【実践】表から簡単作成!Googleスプレッドシートでの業務フロー図作成手順
ここでは、例として「請求書発行業務」のフロー図を作成する手順を解説します。
まず業務の流れを表に整理し、その表を基にフロー図を作成することで、抜け漏れなくスムーズに作業を進められます。
Step 1:業務のタスクを表にまとめる
まず、フロー図にしたい業務のタスクをすべて洗い出し、表形式で整理します。
「ID」「担当」「処理内容」「図形」「分岐(はい)」「分岐(いいえ)」といった項目を用意すると、後の作図が楽になります。
【例:請求書発行業務のタスク一覧表】
ID | 担当 | 処理内容 | 図形 | 分岐(はい) | 分岐(いいえ) |
1 | 営業 | 請求書発行依頼 | 開始 | 2 | |
2 | 経理 | 依頼内容の確認 | 処理 | 3 | |
3 | 経理 | 内容に不備はないか? | 判断 | 5 | 4 |
4 | 経理 | 営業へ差し戻し | 処理 | 2 | |
5 | 経理 | 販売管理システムへ入力 | 処理 | 6 | |
6 | 経理 | 請求書を出力 | 書類 | 7 | |
7 | 経理 | 上長の承認は必要? | 判断 | 8 | 10 |
8 | 経理 | 上長へ承認依頼 | 処理 | 9 | |
9 | 上長 | 承認 | 処理 | 10 | |
10 | 経理 | 取引先へメール送付 | 処理 | 11 | |
11 | 経理 | 控えをフォルダに保管 | 処理 | 12 | |
12 | (フロー終了) | 終了 |

Step 2:図形描画ツールで図形を配置する
タスクの整理ができたら、いよいよ図形を配置していきます。
- メニューバーから「挿入」をクリック
- 「図形描画」を選択

図形描画のウィンドウが開いたら、Step 1で作成した表の「図形」列を参考に、必要な図形を配置していきます。
業務フロー図でよく使われる代表的な記号は以下の通りです。
記号 | 名称 | 意味 |
角丸四角形 | 端子 | プロセスの開始と終了を表します。 |
長方形 | 処理 | 具体的な作業や処理内容を表します。 |
ひし形 | 判断 | 「はい/いいえ」などで答えられる判断や条件分岐を表します。 |
書類 | 書類 | 請求書や報告書などの帳票・書類を表します。 |

Step 3:図形にテキストを入力し、線でつなぐ
配置した図形をダブルクリックし、表の「処理内容」をそれぞれ入力します。
その後、業務の流れに沿って、図形を線(コネクタ)でつないでいきましょう。
図形描画ツールの上部メニューから「線」を選択し、矢印を選びます。

図形にマウスポインタを合わせると接続ポイント(紫の点)が表示されるので、そこを始点・終点としてドラッグすると、図形と線がしっかりと連結されます。

どの図形とどの図形をつなぐかは、表の「分岐(はい)」「分岐(いいえ)」のID番号を参考にします。
例えば、ID「3」のひし形からは、「はい」の場合はID「5」へ、「いいえ」の場合はID「4」へ矢印を伸ばします。線上にもテキストボックスを配置して、分岐の条件を明記するとより分かりやすくなります。

Step 4:体裁を整えて完成
すべての図形と線を配置し終えたら、全体のレイアウトを整えます。
複数の図形を選択した状態で右クリックし、「配置」や「中央揃え」などの機能を活用すると、きれいに整列させることができます。
最後に「保存して閉じる」をクリックすれば、スプレッドシート上に業務フロー図が挿入されます。

【応用編】本格的な作図や共同編集にはGoogleドローイングが最適
ここまではスプレッドシート内で完結する方法をご紹介しましたが、「図形ごとにリンクを貼って情報ハブにしたい」「フロー図上で直接コメントをやり取りしたい」「もっと複雑な図を快適に作りたい」という方には、Googleドローイング(Google 図形描画)の利用がおすすめです。
Googleドローイングは、Googleが提供する無料の作図ツールです。スプレッドシートの図形描画機能よりも豊富な機能が揃っており、より本格的でインタラクティブな作図が可能です。
Googleドローイングの主なメリット
- 広い描画スペース: 全画面を使って、大きなフロー図でものびのびと作成できます。
- 高度な編集機能: 図形の整列、配置、グループ化などの機能がより強力で、デザイン性の高い図を効率的に作成できます。
- 図形へのリンク設定: 図形一つひとつに、関連マニュアルやテンプレートファイルへのリンクを設定できます。フロー図を業務の「情報ハブ」として活用できます。
- コメント機能での議論: フロー図の特定の部分について、コメント機能を使ってチームで直接議論を進められます。「ここの承認プロセスはもっと簡略化できないか?」といった改善提案を、図と関連付けて行えます。


スプレッドシートとの連携方法
Googleドローイングで作成したフロー図をスプレッドシートに表示するには、主に2つの方法があります。
方法1:画像として挿入する
静的な図として貼り付ける方法です。フロー図を頻繁に更新しない場合に適しています。
- Googleドローイングのメニューから 「ファイル」>「ダウンロード」>「PNG画像」 を選択します。

- スプレッドシートを開き、「挿入」>「画像」>「セルの上に画像を配置」 を選択して、ダウンロードした画像をアップロードします。

※この方法では元の図を更新してもスプレッドシートには反映されないため、都度貼り直しが必要です。
方法2:リンクを挿入する
通常の共有機能を使ってアクセスできる人を管理し、常に最新版のフロー図を参照できるようにする方法です。
- Googleドローイングを開き、右上の 「共有」 ボタンをクリックします。

- アクセスできるユーザーを以下のいずれかの方法で設定します。
- 特定のユーザーやグループを指定: 「ユーザーやグループを追加」に直接メールアドレスを入力します。
- 組織内のユーザーに限定: 「リンクを知っている全員」の箇所を組織名に変更し、リンクを知っている組織内の全員がアクセスできるようにします。
- 権限を「閲覧者」「閲覧者(コメント可)」「編集者」から選択し、「リンクをコピー」をクリックします。

- スプレッドシートに戻り、任意のセルに 「挿入」>「リンク」 を選択してコピーしたURLを貼り付けます。

この方法であれば、閲覧制限をかけた安全な状態で、常に最新のフロー図を共有できます。
情報が複数のファイルに分かれてしまう点はありますが、作図の快適さを優先したい場合は、Googleドローイングを試す価値があるでしょう。
まとめ
今回は、Googleスプレッドシートを使って業務フロー図を作成する方法について解説しました。
- 業務フロー図は、業務の全体像を把握し、問題点を発見するために有効
- まず業務タスクを表に整理することで、抜け漏れなくフロー図を作成できる
- フロー図の図形にリンクやコメントを設定することで、よりインタラクティブなマニュアルになる
- 特別なツールは不要。普段使いのスプレッドシートだけで、業務の可視化と改善が始められる
業務の可視化は、業務改善における非常に重要な第一歩です。まずは、ご自身の担当業務やチーム内の身近な業務から、フロー図に落とし込んでみてはいかがでしょうか。
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